年の初めの日の出のことを元旦と言いますね。従って、この元旦は元日の日の出だけに使われる言葉で、二日からは用いないのが習わしです。除夜の鐘が鳴り終わると、この元日の夜明けが近づきます。ローマ神話のヤヌスが新年の扉を開けたのです。そして、このヤヌスは1月Januaryの語源。
晴れていれば朝暗い内から多くの人が初詣に神社仏閣を訪れ、一年の幸多きことを祈念します。夜空には、多くの星々が新年の夜明けを祝うように輝いているでしょう。冬の日本海側は、大陸から押し寄せる高気圧が海上でたっぷりと水分を含み陸上に大雪を降らせます。一方、太平洋側ではカラカラに乾いた寒風が吹き、星達も震えるかのように瞬きを強めます。
冬の夜空には、明るい星が多いのです。ぎょしゃ座のカペラ、牡牛座のアルデバラン、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、オリオン座ではベテルギュースとリゲルが輝き、ふたご座のカストルとポルックスの兄弟。明るい星が多いのは、冬の星達が近くにあるためです。明るさが同じならば、近いものほど明るいことは当然でしょう。オリオン座のベテルギュースは特に赤色なので目立ちます。この星は、明るさの変わる変光星として知られ、大きさも太陽の数百倍、木星軌道の大きさに匹敵する赤色巨星で、そろそろ寿命が尽きようとしている星だ、と言われています。もし、寿命が尽きるとどうなるのでしょう。
1987年2月、当時私は東京天文台で、天文情報・詳しく言えば国の内外からの天文学の情報のとりまとめ役をしていたのです。1通の国際天文学連合からの電報を受け取りました。日本からは見えない南の空にある大マゼラン星雲と呼ばれる銀河に、超新星が現れた、と言う内容でした。国内の関係機関にすぐに連絡したことは言うまでもありません。これが、当時の東京大学理学部教授小柴昌俊氏のノーベル賞受賞の成果であるニュートリノの検出の原因となった現象の第一報だったのです。もし、ベテルギュースの寿命が尽きると、この現象と同じような超新星として夜空はおろか白昼でも肉眼で見られるような明るさになると言われています。もっとも、今すぐに超新星として大爆発を起こすわけではありませんし、もし爆発しても太陽系に影響が及ぶわけでもありませんが。
次の世に 命伝える 寿命かな 香西蒼天
このベテルギュースがいずれ超新星爆発を起こすとしても、現在までに超新星爆発を起こした星は、数多く知られています。もっともよく知られているのは、かに星雲と呼ばれるガス状星雲で、これは日本の平安時代の歌人・藤原定家の書き残した日記、明月記に記載されていて、1054年のことでした。他にも、現在電波元として知られるガス状天体の多くは超新星の名残です。この超新星爆発によって作られた重い元素を含む物質が宇宙空間にまき散らされ、これらが再度集まって誕生したのが現在の太陽系などの第二世代の星達なのです。
宇宙では 余す物無く リサイクル 香西蒼天
リサイクル 超新星に 教えられ 香西蒼天
宇宙のリサイクルを見習いたいものですね。
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