天文セミナー 第198回

『星の歳時記』



30.牡羊座と三角座

 どちらも小さい星座ですが、昔から重要な星座として知られていました。牡羊座は今から2000年ほど前に春分点があったことからとても重視されていました。また三角座はギリシャ文字のデルタ(Δ)に似ていることからデルタ座とも呼ばれていたそうです。何れも、プトレオマイオスの48星座に含まれています。
 牡羊座は、春分点があったため重要視されてきましたが、地球の歳差運動のため春分点はお隣の魚座に移動してしまい、その役目を失ったのですが、現在も使われている春分点のマークγに似た記号は牡羊の顔を現したと言われています。矢っ張り重要な星座なのですね。この牡羊座は、初期のギリシャ神話によると、ゼウスが巨人族に襲われて逃げた時に姿を変えた羊だと言います。さらに、次のような物語も残されているのです。昔、テッサリアの王タマスには二人の子供があって、フリクスと妹のヘルレと言いました。この二人は継母に惨くあしらわれていました。この様子を見たヘルメス(マーキュリー)は哀れに思い金の毛の生えた羊を遣わして二人をその背に乗せて継母のところから逃げ出させました。羊は空を飛んで行きましたが、その途中で妹のヘレルは不幸にも羊の背中から落ちてヨーロッパとアジアの境になる海に墜落しておぼれてしまいました。その場所がヘレスポントと呼ぶようになったそうで、ここは今ではヘレスポントス海峡(ダーダネス海峡)なのだと言います。一方、フリクスを乗せた金毛の羊は空を飛び続け無事にコルキスに降りることができたので、その土地の王アイエネスに金毛の羊を献上しました。この物語の後半が、勇士イアソンを隊長とする一隊が快速船アルゴ号に乗って金毛の羊を求めての旅物語につながるのです。漢字の翔(しょう・飛ぶ)の字は羊に羽です。空を飛んだ金毛の羊を思わせますね。

  イアソンの 求めし羊  冬の空      香西蒼天

  冬空の   金毛の羊 寒さ耐え 香西蒼天

 さて、次は三角座。先述のようにデルタ座(Δ座)とも呼ばれた小さい星座ですがこの星座を有名にしているのは何と言っても渦巻き星雲M33でしょう。アンドロメダの横腹にピッタリとくっついていて、意外に見つけやすい星座です。三角座にあるM33銀河 、3に縁がありますね。M33銀河はアンドロメダ銀河とは向きが違っていて、ちょうど真正面から見ている姿です。肉眼で見るのは一寸無理かも知れませんが、暗い夜空があるところでトライしてみて良いかも知れません。双眼鏡があれが、ボーッと広がった姿を見ることができるでしょう。理科年表などのデータによると、距離はおよそ250万光年、大きさは62分x39分角、B光度は6.3等。我々の銀河系とアンドロメダ銀河を中心として半径300万光年程度の範囲にある銀河の集団を局部銀河群と呼んでいますが、このM33銀河はこの局部銀河群の主要メンバーなのです。
 南の星座にフランスの天文学者ラカイユが追加した星座に定規座があります。が、この三角座の方が小学校でも使った三角定規によく似ていると思いませんか。星から星へとこの三角定規を遣いながら旅をするのも良いかも知れませんね。

 冴え渡る  夜空に懸かる   三角座       香西蒼天

 デルタ座は  銀河を測る   定規星 香西蒼天

 夜空に懸かる三角定規は、球面天文学で学ぶ球面三角を思い出しますね。


2013年12月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2013年12月の星空です

12月になると、なんとなく慌ただしい雰囲気になります。
寒い頃ではありますが、星空を楽しみゆとりも必要ですね。
まずは夕方南西に見られる金星。日没前から見られるほどの
輝きです。東の空には、冬の星たちがたくさん昇ってきました。
明るい星が多い冬の星空での中で、一番目立つのはオリオン座
でしょう。2つの1等星と三ツ星が目印です。
東北東には1等星よりもさらに明るい木星が輝いています。


次 回も、お楽しみに

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