9月に入ると、世間の話題はもっぱら中秋の名月。今年の名月は何日、と質問されます。それほどまでに身近になった中秋の名月ですが、今年は月末の30日。なぜだか、どうしてだか中秋の名月ばかりが旧暦(太陰太陽暦)を思い出させてくれます。旧暦では秋分を含む8月を仲秋。その仲秋の月の15日を名月と呼び、宵の一刻を月を愛でながら楽しむのがお月見。日本のゆかしい習慣です。
さて、お月見は此くらいにして、今月は秋の夜空に開いた大きな四角い窓を見ることにしましょう。この窓から見た夜空には何が見えるでしょう。この窓は、ペガサス座。このペガサス座とお隣のアンドロメダ座を一纏めにして見ると、巨大な升、北斗が見えてきます。星の数も本物の北斗七星と同じ七個。北斗七星と見間違えることはありませんが、よく似た星の配列ですね。南斗六星を含めると、夜空の三斗。北斗七星が北極星を見つけるための指極星と呼ばれますが、このペガサスの大きな四辺形からも北極星を容易に見つけることが出来るのです。
北極を 示すペガサス 天の窓 香西蒼天
それはさておき、環境省が毎年夏と冬に行っているのが、全国星空継続観察・スターウオッチングネットワークです。この観察事業は、多くの人に夜空を観察してもらい、私たちを取り巻く大気環境の現状を認識し、より良くなるような意識の向上と環境監視が目的です。この事業では、実際の観察に肉眼による天の川の観察と双眼鏡による観察があります。夏はこと座の織女、冬はすばるを対象にしての双眼鏡による星の観察です。織女もすばるも、天頂に近い場所なので、楽な姿勢での観察には工夫が必要になります。
そこで、ペガサスの四辺形を観察の対象にしてはどうだろう、という提案が出されたことがありました。良く晴れた暗い夜、ペガサスの四辺形の内側、つまり4個の星で囲まれた天域を観察の対象としてはどうか、と言う提案です。この四辺形の内側をよく見てください。明るい星はありません。暗い星も肉眼で見えるのは僅かです。双眼鏡でこれらの星を数えようという提案です。結局、この提案は星空を正確に区切ることが困難だし、織女やすばると同様に天頂だ、ということから採用されませんでした。本当に夜空に開いた暗い大窓がペガサスの四辺形です。皆さんも、この大窓の内側の星数えに挑戦してみてはどうでしょう。
天馬駈け 大気環境 エコ暮らし 香西蒼天
実際、天の川を基準にした座標系(銀河座標)によるとペガサス座は中緯度にあり、天の川から離れているので星の数は多くはなく、さらにガス状の物質も少ないので遠くまで、つまり大昔まで見通しがきく場所の一つです。従って、銀河系外の銀河を観測するのに適した場所の一つでもあるのです。
ペガサスは 宇宙開闢 見せる窓 香西蒼天
筆者の駄作五七五でした。
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