夏の夜空を飾るのは何と言っても「さそり座」でしょう。日本では、七夕の星と天の川が最もよく知られていて、各地で開かれる七夕祭りには大勢の人で賑わいます。この七夕の行事も本来はいわゆる旧暦(太陰太陽暦)で行うのが正当なので、最近は伝統的七夕と称して昔から親しまれて来た旧暦の7月7日に行われる所も増えてきたようです。
旧暦の七夕では、夕方の南の空にはちょうど7日の上弦の月が懸かっています。今年の伝統的七夕は8月24日。かなり遅い七夕ですね。そして、上弦の月はちょうどさそり座の爪に当たる場所近くに見えています。天の川もすぐ近く。七夕の織女、牽牛の間から南のさそり座の尾の方へ流れ下ります。以前、今年の七夕は月が有って天の川や七夕の星があまりよく見えませんね、と言われたことが有りましたが、伝統的七夕では必ず上弦の月が南の空に輝いているのです。そして、それも天の川に尾を浸す「さそり座」の近くで輝いています。
南半球へ行ったときのことです。何と言っても南天の天の川は圧巻です。明るく輝く光の帯。地上に自分の影が出来ます。月夜に影踏み鬼ごっこをした子供の頃を思い出します。その天の川には、北半球では大きな釣り針に見えるさそり座のS字が、何
なく弱々しく天の川に逆さまに寝そべっているではありませんか。これでは、さそりを連想することは難しいと感じ、星座の歴史は北半球に始まるのだと実感したのでした。
さそり座の 寝たる姿や 南(なん)半球 香西蒼天
釣り針も 釣り損ねてか 天の川 香西蒼天
そして、南半球でさそり座が夕方見えるのは、南半球の冬。季語が逆転します。
このさそり座の東にあるのが「いて座」。いて座も上下が逆さまに懸かります。しかし、南斗六星が良い目印。天の川に、どっぷりと身を浸して水を汲みます。
斗は、日本などでは升、または柄杓をあらわします。そして、南半球では南斗六星のことをミルクさじ(Milk
Dipper)とかコーヒー濾し。または、茶こしでティーポット。枡形に連なる二つの星を取っ手に見立てるのは、南北の両半球でも共通でした。
コーヒーを 天の河原で 淹れて飲み 香西蒼天
満天の 星が友達 エコ暮らし 香西蒼天
南半球の砂漠地帯へ行ったときのことです。日没になると、一気に星が輝き始めます。満天の星空です。ここで飲む一杯のコーヒーはまた格別。からからに乾いた体にしみ込みます。
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