冬の北天に懸かる星座、お馴染みのカシオペア座です。1月の夜8時頃には、北極星の真上からやや西寄りで輝いています。星空に詳しい人は、カシオペアや北斗七星の北極星に対する位置で時刻を知ることができるほどです。このカシオペアが、北極星の真上に近いところで輝いていると言うことは星の並びはMの形に見えることになりますね。北極星の真下ではこの並びはWの形。日本の星の名前を生涯にわたって調査研究された野尻抱影氏の「日本星名辞典」(東京堂出版、昭和48年)によると、このカシオペア座はいかり星(錨星)、山形星、五曜などと呼ばれている(いた)ようです。錨星、山形星はそれぞれ北極星の下と上にカシオペア座が見えるときの様子をそのまま表現したものですね。ところが五曜となるとどうでしょう。一寸頭をひねって考えさせられますね。実は、この五曜に対するのは北斗七星の七つの星でこれを七曜(日、月、火、水、木、金、土)と呼び、この七曜から日、月を除いたものが五曜。七曜が東にあれば五曜は西に、と呼んだそうです。星座の配置を熟知していた証拠です。
「夜になって山のシルエットを仰ぐと カシオペイアの階段が丁度そこへ懸かっている 山からとび立ち得たか、 友よ。」 岡山県赤磐郡熊山町に生まれ、多くの詩集を残し平成7年2月に死去した永瀬清子の詩集「山上の死者」の「Sの霊に」の一節です。
ギリシャ神話に登場するカシオペヤ座は、エチオピア王ケフェウスの后ですね。そして、W型の星の配列は、彼女が座る椅子と体、そして足に当てられています。さらに、我が国などではこのW型の星の配列を、船の錨に例えて「いかり星」とか、M型に見て「やまがた星」などと呼ばれています。
ところが、秋10月から11月にかけての夕空に懸かるカシオペヤ座は、ちょうど階段を連想させ、北極星の上に登るような位置になるのです。北の方向に山があれば、その山の斜面の上に懸かる階段。天に昇る階段とも見ることができるのです。この詩に出会ったとき、私はこの作者の鋭い感性に驚きました。神話や伝説にとらわれながらも、自分の感性の発露を自然のままに表現できるのはすばらしいことですね。
北天に 架かる階段(きざはし) カシオペア 香西 蒼天
朝日や夕日が雲間から射し込んで、それこそ光の矢束のように見えることがあります。この情景に、ある種の感動を覚えることもありますね。太陽が低くなり狭い雲間、一種のスリットからの太陽の光を見ているので、この情景を、「天の梯子」とか、「ヤコブの梯子」などと呼ぶようです(旧約聖書・創世記28章10−19)。
神の住む 天国目指す 天の階段(きざはし) 香西 蒼天
カシオペアなど、いずれも天国に昇るための梯子と言うイメージ、ジャックと豆の木の豆の木も同じイメージではないでしょうか。
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