天文セミナー 第172回
『星の歳時記』
銀河系の中心方向と言われる射手座。半人半馬の姿で描かれていますね。その東にあるのが山羊座。逆三角形で半ヤギ半魚の姿で天に懸かっています。ギリシャ神話のパンは、上半身は人間の姿で豊富なあごひげをたくわえ、額からはヤギの角が生えています。そして下半身はヤギの姿で足にはひずめを持っているという牧人と家畜の神様です。このパンは足の速い伝令の神ヘルメスの子でした。成長したパンは、身軽に野山を駆け巡り毎日ニンフ(妖精)達を追いかけ、その中のシュリンクスは彼に川岸まで追い詰められ葦に変身してしまいました。パンは、風にそよぐ葦が奏でる音楽を聴き葦笛シュリンクスの笛を作り長く愛用したそうです。ニンフ達を追い回して疲れるとパンは木陰で昼寝をするのが日課で、この昼寝の邪魔をすると怒り狂ったようになり人も動物もさらに神々さえも恐怖に震えたのでした。このパンの怒りがパニックの語源になったそうで、恐怖や混乱を表す言葉としてしばしば使われますね。一方、フランスの作曲家クロード・ドビュッシーが1892年から1894年にかけて作曲した管弦楽に「牧神の午後への前奏曲」があります。この曲は、詩人マラルメの作品「牧神の午後(半獣神の午後)」の影響を受けて書かれたと言われています。内容は、牧神の象徴「パンの笛(シュリンクスの笛)」がイメージされていてドビュッシーの音楽にも強い影響を与えています。つまりパンは、恐怖の神であると共に音楽の、特にフルートの神とも思われていたのでした。そこで一句。 |
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