今年7月22日には、鹿児島県トカラ列島で皆既日食が見られることはすでに多くの方はご存知ですね。そこで、今月から7月までの4回に亘って「日食物語」と題して、過去から現在に到るまでの日食を振り返ることにしましょう。回想とも言うこのお話は、先ず古代の人たちの日食に関わる神話・伝説から始めることに致しましょう。
先ずは、世界の宗教の始祖とも考えられているゾロアスター教(拝火教とも呼ばれます)が伝える日食の起源です。これは、古代のインド北西部に始まった宗教の一つで、ゾロアスターと呼ばれる人物が説いた一種の哲学です。そのゾロアスター教の聖典「リグ・ヴェーダ」に因りますと、神々が集まって不死の飲物「アムリタ(甘露)」を作る相談をしていました。最高の神ヴィシュヌとプラシュマーが大海をかき混ぜるとアムリタが得られると教えたので、神々は魔族のアスラたちの力を借りて大海をかき回しました。すると大海から太陽と月、さらに幾つかの神々などが現れ、最後にダヌヴァンタリ神がアムリタの入った白い壷を持って現れました。その白い壷を巡って神々と魔族たちは奪い合いの争いを始めたのですが結局は神々が勝ち、アムリタを飲みあいながら宴を開きました。そのとき魔族のラーフが神に成りすましてアムリタを飲み始めたのです。それを、太陽と月が見破り、最高神ヴィシュヌに告げたのでした。ヴィシュヌはたちどころにラーフの首を刎ねました。そのときアムリタはラーフの喉まで達していたので首だけが不死になりました。ラーフは太陽と月を恨み、後を追い回し飲み込もうとしますがラーフには首から下が無いので飲み込んでもすぐに切られた場所から抜け出てしまいます。これが日食と月食だ、というわけなのです。この場面に登場する最高の神プラシュマーは仏教では「梵天」、そしてラーフは佛教で伝えられる曼荼羅に描かれる「ラーゴ(羅?:ラゴー)」で、アスラは奈良興福寺の国宝舘でおなじみの「阿修羅」です。もっとも、興福寺の阿修羅は、仏教の教えにより改心し仏を守護する立場にある、とされていますが。

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