天文セミナー 第139回

『望遠鏡物語(1)』『望遠鏡物語(2)』



望遠鏡物語(1)

 ガリレオ・ガリレイが望遠鏡を天体に向けて、初めて天体の素顔を見たのが1610年と言われていましたが、2006年版の理科年表(国立天文台編纂)からは1609年と改定されています。ガリレオは1609年には、早くも望遠鏡によって天体観測を始めていました。そして彼が1610年3月に書き著した「星界の報告」にはその年の1月に望遠鏡で見た木星と4個の衛星のスケッチが掲載されているのです。
 この事実を根拠に、来年2009年はガリレオによって初めて天体に望遠鏡が向けられて400年になるのを記念する催し「世界天文年2009」が国際的に繰り広げられることになっています。
 ガリレオは天文学に早くから大きな関心を持っていて、1604年に出現した新星を観測して講演までしています。前記の「星界の報告」の中で、ガリレイは「およそ10カ月前、あるオランダ人が一種の眼鏡を製作した、という噂を耳にした。それを使えば、対象が観測者の目からずっと離れているのに近くにあるようにはっきり見える、ということだった。実際に目で見てその驚くべき効果を確かめた、という人もあった。(中略)ついに自分でも思い立って同種の機械を発明できるように原理を見つけ出し手段を工夫することに没頭した。それから程なく、屈折理論に基づいてそれを発見したのである」、と書き残しています(「星界の報告」岩波文庫)。そして、この文書が書かれたのは1610年3月の初めだから、望遠鏡の噂を耳にしたのは前年の1609年5月ごろではないだろうか、といわれています。こうして作られたのが、現在ガリレオ式望遠鏡と呼ばれている凸レンズと凹レンズを組み合わせた屈折望遠鏡でした。
 ところで、レンズという呼び名の語源は何と「豆」だったのです。今でも時々耳にする豆の名前、つまり「レンズ豆」といわれているものが始まりとされています。この豆は、直径5mmほどの、ちょうど凸レンズのような形をしています。面白いものですね。このレンズは老眼鏡や虫めがねに使われ、物を拡大して見ることを可能にしました。しかし、一方ではこの凸レンズの逆になった凹レンズも作られていました。江戸時代の大名などは、すでに眼鏡を使用していますが、これなど日本にも意外に早く到来していたことを物語っていますね。




望遠鏡物語(2)

 凸レンズと凹レンズの組み合わせがガリレオ式望遠鏡です。この組み合わせによる望遠鏡はそれまでに発明され使用されていた顕微鏡の一種の変形だったとも言われています。ちなみに理科年表の物理/化学部には顕微鏡は1590年にオランダのヤンセンが発明し、望遠鏡は1608年にはやはりオランダのリッペルスハイが発明したと記載されています。
 しかし当時の物理化学上の発明・発見はある程度ベールに包まれていて事実の特定、つまりいつ、どこの誰が、ということはとても困難だったことなのでしょうね。ところで、このガリレオ式望遠鏡の一つの欠点ともいえるのが視野の狭さと望遠鏡の筒がとても長くなることでした。この欠点を克服したのがヨハン・ケプラーで1611年のことでした。このケプラー式望遠鏡は、凸レンズと凸レンズを組み合わせた設計になっていて倍率を上げても視野がガリレオ式ほどには狭くならないことでしたが、欠点は見える像が倒立することでした。しかし、ケプラー式では、焦点近くに十字線などを挿入することが可能で、この十字線を基準に照準を決めるなど多くの利点がありました。
 このように2種類の形式をもつ望遠鏡が相次いで発明され、使用され始めるとそれまで知られなかった多くの事実が知られるようになりましたが、中でももっとも重要視されたのはなんと言っても軍事用に大きな威力があるということでした。その軍事用に用いられることを背景に、多くの光学研究者と光学会社が新しい方式の研究と製作に没頭したのでしたが、反面、未知の世界に足を踏み入れていた科学の分野の発達も目覚しく、この分野からの強い要求も始まってきました。こうした、要求に応じるための研究、つまり開発と進化が車の両輪として機能し始めてきたのでした。
 ガリレオが発明したガリレオ式望遠鏡も、ケプラーが発明したケプラー式望遠鏡も、いずれもガラスで作ったレンズを使用していました。ところで、望遠鏡の主な性能である倍率は対物レンズと接眼レンズの焦点距離の比であらわされます。対物レンズの焦点距離が長いほど、また接眼レンズの焦点距離が短いほど高い倍率が得られるわけです。こうした要求から長大な焦点距離を持たせる必要があり、いわゆる空気望遠鏡と言うものが出現することになってきました。(次号に続く)




2009年1月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2009年1月の星空です。
世界天文年の幕開けです。
冬の星たちがたくさん昇ってきました。

天文カレンダー 惑星たち
   
1日: 月の近くに木星が見える。このころの夕方、金星と木星が並んで見える元旦、月の近くに金星が見える
世界天文年2009スタート
3日: しぶんぎ座流星群の極大(出現期間1/1〜7)
4日: 上弦(半月)
水星が東方最大離角
5日: 小寒(太陽黄経285°)
11日: 満月○
12日: 成人の日
15日: 金星が東方最大離角
月の近くに土星が見える
17日: 冬の土用(太陽黄経297°)
18日 下弦(半月)
20日 大寒(太陽黄経300°)
水星が内合(太陽の方向)
24日: 木星が合(太陽の向こう側)
26日: 新月●
水星: 4日ごろ、夕方の西空で見ごろとなります。近くに金星や木星もいて、絶好の被写体になっています。
金星: 夕方の西空で見ごろが続いています。15日に見かけ上、太陽からもっとも離れ、今シーズン一番の見ごろです。
火星: 見かけ上、太陽に近く、観察できません。
木星: 夕方、西空の低空に見えますが観察には適しません。
土星: 真夜中ごろ、東の空に姿を現し、明け方には空高く昇ります。輪が真横に近い状態になっています。

次回も、お楽しみに

天文セミナーに戻る