天文セミナー 第130回

『春の行事』『宇宙って何?』



春の行事

 春四月。自然の息吹を強く感じるのが四月。卯月とも呼ばれる今月です。入学式が各地で行われ、新入生の華やいだ声が木霊(こだま)します。ギリシャ神話の木霊の神・エコーの活躍です。今年の春分は3月20日の14時48分。この時刻に太陽が天の赤道を南から北に横切って北半球に入ってきます。
 キリスト教の重要な行事の一つ、復活祭は移動祝日で、春分の後の満月に続く日曜日と定められている、と言われていますがそれは春分の日が3月21日という大前提があったからです。ところがこの大前提がグレゴリオ暦が使用される前のユリウス歴では必ずしも3月21日とは限らなくなってしまいました。復活祭を決めるための暦はキリスト教の教会が使用する教会暦に準拠するのが正式で、今年は3月23日がその日にあたります。
 手元の暦によると、春分は3月21日、満月は3月22日、続く日曜日は3月23日でこの日が復活祭になります。現行のグレゴリオ暦によっても同じ日付になりますね。そして、この日付は復活祭としては最も早い記録になるでしょうね。そして最も遅い復活祭は2011年の4月24日。移動期間はおよそ1ヶ月。イエスが十字架に架けられたのが金曜日、そしてその3日後に復活されたと言うことから決められた祭日なのです。
 ところで、日本ではこの4月は前に書いたように卯月。そしてその8日のことを卯月八日(うづきようか)と言って、お釈迦様の誕生日とされています。各地のお寺さんでは、この日にはお釈迦様の像に甘茶を注いで行う潅仏会が開かれます。この潅仏会は別名花祭りとも言われ、釈迦が誕生したとき梵天、帝釈が仏の体に甘露を注いで洗ったという故事に基づくものといわれています。
 イエスの復活、釈迦の誕生。その真偽の程は別としても誕生と復活の4月はまさに入学式などには打ってつけの季節ではないでしょうか。最近、欧米に習って9月を学校の新年度にしたら、などと言われているようですが如何でしょう。


宇宙って何?

 次々に人工衛星が打ち上げられている頃、日本では東京大学の糸川博士を中心にロケットの開発が始められました。糸川博士達が開発したのは、アメリカやソ連が開発した液体燃料を使用するのではなく、固体燃料、つまり爆薬(火薬)を使用する方式でした。瞬時に燃焼する火薬を制御することは大変困難なことです。こうして最初に完成したのが愛称・ペンシルと呼ばれた極小型のロケットでした。幾多の困難を乗り越えた結果が、現在飛行中の「かぐや=セレーネ」で、月の正体をあばこうと言う試みです。
 人工天体による天体観測の上での大きなメリットは、地球大気の影響から逃れられると言うことです。地上数百kmを移動する人工天体は、当然ながら地球大気の外から天体を観測することが可能なわけです。長い間天文学者を悩ませ続けてきた大気の揺らぎと吸収から開放されることに繋がります。さらに、肉眼に感じる光、可視光線以外の電磁波も観測に使用できることになるのです。先ず、X線が使われX線を発している天体・X線星が見つかり高エネルギー天体の存在が確認され、さらに赤外線によって低温度の天体、言い換えると誕生間もない若い天体が知られました。星の生涯のシナリオが観測からも確認されるようになって来たのです。そして、これらの波長域を観測手段とする人工衛星が打ち上げられてきました。
 天体観測は、もはや地上からだけのものではなくなって来たのです。しかし、宇宙から宇宙を見るためには地上からの観測とは比べることのできない困難を伴います。先ず、人が観測の場に関われないことでしょう。どうしても遠隔操作ということになります。さらに、波長域を任意に、しかも随時に変更することは不可能です。従って、単独の目的に添った人工衛星を製作し打ち上げることが要請されるのです。
 幾多の困難は伴いますが、こうして宇宙から宇宙を観測することが可能になって、現在の我われの知識は最初の打ち上げ当時に比べ驚異的に増加しています。
 宇宙を知ることは即ち「我われは何処から来たのか、そして何処へ行くのか、また我われとは何だ、我われは果たして宇宙で一人ぼっちか?」という多くの疑問に応えることに繋がるのではないでしょうか。




2008年4月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2008年4月の星空です。
冬の星たちは西の空へ、春の星たちが東の空に見えます。
オリオン座などの冬の星はお早めに。

天文カレンダー 惑星たち
   
4日: 清明(太陽黄経15°)
6日: 新月●
9日 の近くにプレアデス星団が見える
12日 月の近くに火星が見える
13日: 上弦(半月)
15日: 月の近くに、しし座の1等星レグルスと土星が見える
20日 穀雨(太陽黄経30°)
満月○
23日 月の近くにさそり座の1等星アンタレスが見える
(深夜〜24日明け方)
27日: 月の近くに木星が見える(明け方)
28日: 下弦(半月)
29日: 昭和の日
31日: 月の近くに木星が見える(明け方)
水星: 4月16日に太陽の向こう側を通過するため、4月はほとんど見えません。
金星: 明け方、夜明け直前に見える。しばらく観察は難しい。
火星: おうし座からふたご座の方向に見える。1等級でオレンジ色に見える。
夜暗くなると西の空高くに見え、真夜中に北西の空に沈む。
木星: いて座の方向に見える。マイナス2等級でとても明るい。
深夜2時ごろ南東の空から昇ってくる。明け方南の空に見える。
土星: しし座のレグルスの左に見える。レグルスよりも少し明るい0.6等級。
夜暗くなると南東の空高くに見え、明け方西の空に沈む。観察のチャンス。

次回も、お楽しみに

天文セミナーに戻る