天文セミナー 第127回

『年の初め』『人工衛星打ち上げ50周年』



年の初め

 新しい年、平成20=2008年が明けました。早いもので、この天文セミナーを書き始めて10年以上が経過したことになり、その間多くの方々にお読み頂いて来た事を感謝し、厚くお礼を申し上げます。
 さて、今回のタイトル、年の初めとは何でしょう。現在、私達は特別な気持ちで新しい年を迎えるとすれば元旦の祝い膳、または歳末の除夜と初詣くらいで、年の変わったことはカレンダーが新しくなることで実感することになるのでしょうか。では、年の初めのもつ意義は、と聞かれると返答に困ってしまうのが実状でしょう。実際、年の初め、つまり年初は何処にあっても別段の困難は生じません。例えば、運動会などで行われる100メートル競走。スタートラインはトラックの何処にあっても困ることはなく、不思議でもありませんね。このように、周期をもつものにとってのスタートラインは、いわば取り決めであり、約束事なのです。そこで、100メートル競走で、各自が別々のスタートラインに立ってスタートしたらどうなるでしょう。走者も混乱するでしょう、また観客や審判員も困惑するでしょう。この混乱が起きないようにするにはスタートとゴールを決めておく必要があるのです。
 年初も同様で、太古には情報通信も発達していませんでしたので、例えば部族ごとに違ったスタートラインとゴールが使われていました。やがて、1年や1月という周期が発見されスタートラインもゴールも決められて来たのでした。例えば、中国で発達して日本でも使われてきたいわゆる旧暦=太陰太陽暦では立春を年初と考えて来ました。そして、古代のローマ暦では現在の3月が年初でしたが、イタリアのヴェネチアの年初は3月1日、ピサでは3月25日、フィレンツェでは3月26日でした。このように、都市や地域によって年初はばらばらで、イギリスでは古くはクリスマス年初(12月25日)が使われてきましたが14世紀にはイエスの受胎告知年初(3月25日)に変更になりました。世界的に統一されたのは明治時代になってからですが、それでもイスラム歴の年初は毎年移動していて、われわれが使用している暦とはかけ離れたものになっているのです。


人工衛星打ち上げ50周年

 2007年の10月28日に、佐治天文台を会場にして「JAXA=宇宙航空研究開発機構」のタウンミーティングが開かれました。多くの方々がお集まりくださり、JAXAの研究者やその他の担当者の話に耳を傾け、質問や提案、さらに今後の日本の宇宙開発について語り合うことができました。
 思い出してみると、2007年の10月といえば、人類が始めて地球の重力を振り切って宇宙空間へ飛翔体=人工衛星を発進した記念すべき日から50周年。まさに、記念すべき時であったのです。私は、この始めての人工衛星が発射された時、1957年10月4日に大きな興奮を味わったことをいまだに強く覚えているのです。1957年といえば、日本の国力も第二次大戦から回復し、国際貢献の機運が高まってきた頃です。そして、国際的にも科学の推進と国際協力が強く要請されていて、その具体的な現れが国際地球観測年(IGY)として1957年7月から半年間にわたって繰り広げられることになり、全地球規模での科学的探査と研究が計画されました。この計画は、人工衛星による大気圏外からの地球の物理観測、そしてまだ未知の状態に近かった南極大陸での観測でした。日本もこの計画に最初から参加して観測船「宗谷」が観測員と観測機材を満載して南極大陸に向かったのです。到着したのがオングル島、そして此処に基地を設営して「昭和基地」と名付けたのです。この基地を整備拡張して現在も観測活動が続けられています。そして、このIGYの事業の一つ、大気圏外からの地球観測に当時の東京天文台(現・国立天文台)もこの観測に参加することが決まり、先ずアメリカが打ち上げる人工衛星の観測を計画したのです。この人工衛星は、自分の存在を示すための電波を発信することにしていて、この電波だけを頼りに光学観測して軌道を決定しようと言うものでした。ところが、アメリカのこの計画が中々進展しません。そして、記念すべき日10月4日が来ました。当時のソ連が人工衛星の打ち上げに成功したと言うニュースが世界中を飛び交いました。このニュースに世界中が湧きかえったのでした。そして、「本当なの」、「ウソでは?」と。自分自身で見るまで、多くの人は半信半疑でした。(続く)



2008年1月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2008年1月の星空です。

いよいよ冬の星たちの出番です。
オリオン座を目印に、まわりの星座をたどって見ましょう。

天文カレンダー 惑星たち
   
1日: 元旦.2008年スタート
3日: 一年で地球がもっとも太陽に近づく(近日点)
4日 この頃りゅう座イオタ(しぶんぎ座)流星群が見られる
5日 月の近くに金星が見える(明け方東)
6日: 小寒(太陽黄経285°)
8日: 新月●
16日 上弦(半月)
20日 月の近くに火星が見える
21日: 大寒(太陽黄経300°)
22日: この頃夕方西空に水星が見える(東方最大離角)
満月○
24日: 月の近くに、しし座の1等星レグルスが見える
25日: 月の近くに土星が見える
30日: 下弦(半月)
水星: 1月中旬が夕方の西の空で見るチャンスです。日没後の西の空に注目。
金星: 夜明け前の南東の空低くに見えます。1月末から2月にかけて木星に接近。
火星: ふたご座からおうし座へ少しずつ移動しています。まだまだ明るく観望好期。
木星: 夜明け前の南東の空低くに見えます。1月末から2月にかけて金星に接近。
土星: 22時頃、東の空に見えます。これからが土星の観察シーズンになります。

次回も、お楽しみに

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