天文セミナー 第122回
『第一次世界大戦』『鋭い目 望遠鏡のレンズ』
現在の国立天文台(旧東京大学東京天文台)。この天文台の象徴はなんと言っても口径65cmの屈折望遠鏡でしょう。昭和4年、ドイツのカール・ツアイス社から購入して設置されたのでした。昭和30年代までの理科の教科書には必ずといっても良いほどこの望遠鏡の写真が掲載されていました。この望遠鏡は65cm大望遠鏡と言われていましたが、実際には口径65cmの天体写真撮影用の主望遠鏡に口径38cmのガイド用の眼視望遠鏡が同架されています。焦点距離はそれぞれ10m20cmと10m83cmで長大な鏡筒を持ち、65cmの主望遠鏡の鏡筒は筒の両端を細くしてレンズなどの重量で筒が撓ることに対する配慮が施されています。そして、この長大な望遠鏡を支える支柱は10mもの高さを持つドイツ式の赤道儀です。可動部分だけの重量が6トン、支柱を含めると13トンもあります。この重量を支えながら、設置されている地面からの振動を最小限にするための配慮として、地下10mまで基礎が打ち込んであり、さらにその周囲には乾いた山砂が敷き詰めてあることは、4月にお伝えした通りです。 |
望遠鏡と顕微鏡。いずれも科学の目として大きな役割を果たしてきました。フランスの天文学者ラカイユが1750年代に作った星座にも見られるもので、当時芽生えたばかりの近代科学を支える大きな役目を果たしていたことが知られます。遠方の事物をあたかもすぐ目の前にあるもののように拡大して見ることができることから望遠鏡のことを江戸時代の日本人は遠眼鏡と呼びました。精確な日本地図を作ったことでよく知られている伊能忠敬も数台の遠眼鏡を所持していて、それらを測量に使用したことが知られています。 |
次回も、お楽しみに |