天文セミナー 第114回

『ふたご座流星群』『3つの北極』



ふたご座流星群

 毎年、12月中旬になると決まって現れるのが「ふたご座流星群」。寒さにも負けずに夜空を見上げる人たちがいます。かなりの数が夜空を横切って流れるので、多くのファンを魅了します。流星群の元になっている物質は、主に彗星のダストの尾によって供給されていると考えられていますが、このふたご座の流星群の元になっている物質はいわゆる彗星状をした彗星ではないのではないかと考えられています。そして、その母天体として挙げられているのが、1983年に発見され小惑星に分類されているパエトンです。流星群の母天体の軌道とパエトンの軌道がとてもよく似ているからなのです。
 研究者が、彗星と小惑星を区別するのは、主に見かけの姿が手がかりです。点状に観測されると小惑星、彗星状にボーッと見えれば彗星と言うのが先ず最初で、次に観測を継続していてガス状の物質が噴出されてコマが見られると彗星に改めて分類されます。つまり、本体を包むコマが観測されると彗星、コマが観測できないと小惑星と言うわけです。こうして、今までにいくつかの小惑星が彗星に分類換えをされたことがありました。ところで、ふたご座の流星群の軌道とよく似た軌道をもつ天体・パエトンはコマの発生が観測されていません。そこで考えられるのは、長い間太陽系の中を公転している内に、太陽に熱せられてガスとして噴出するような物質を失ってしまい、外見からでは彗星と決めてしまうことができなくなった様な天体、言い換えるとガス状物質を失った彗星で彗星の残骸とでも言えるのがふたご座の流星群の母天体パエトンだ、と言うことになるのです。
 ところで、最近多くの小天体が発見され、その中には太陽に非常に接近するような軌道を持つものが知られています。これなども、ガスを失ってしまった彗星の亡骸なのかも知れません。研究者の中には、彗星として活動が続けられるのはおよそ1000公転の間だと言う人もあります。そうであれば、1.43年の周期で公転するパエトンはおよそ1500年以上太陽の回りを回っていたことになりますね。9月に書きました隕石。この隕石の母天体は流星群として見られるものの母天体とは本質的に違う起源なのです。


3つの北極

 北極。地球の自転軸(地軸)が北の地面と交わるところ(国語大辞典・言泉)=地理学上の北極。または、地球の自転軸の延長線が天球と交わるところ(天文学)とされていますね。そして、この地理学上の北極のことを北極点といって北緯90度という1点で表します。さて、冬になると北緯66度33分以上の北極圏では、終日太陽を見ることがありません。この北極圏で、真冬に見られるのがオーロラ。感動的な現象で、「北の光:ノーザンライツ」と呼ばれる美しい光の乱舞です。
 ところで、私たちが一般に北極と呼んでいるのは、地軸が北の地面と交わるところのことで、ここに立つと地球の北の頂点に立っていることになりますね。冬至の頃には、全く太陽が姿を見せませんが、夏至の頃になると太陽は1日中地平線の上をグルグルと回転していて、出没がありません。北極地方以外で、北の方向を知るために使われるのが方位磁石で、重心を針などで支えられた磁針が示す北の方向で方位を知ります。ところが、地球は良く知られているように、大きな磁石です。したがって方位磁石の磁針は地球の磁北極を指すことになり、正確には地理学上の北極とは違う場所を指します。この差のことを偏角と呼び、日本などではおよそ8度ほど西の方向を指します。この磁北極を最初に発見したと言われるのがイギリス人のジェームス・ロスで1831年のことだったそうです。そして、その位置は当時、北緯70度5分17秒、西経95度5分で、カナダの北方プーシア半島だったのが、その後500kmも北西に移動し現在はレゾリュート島の近くにまで移動しているそうです。
 以上で、地軸による地理学上の北極と磁石による磁北極の2つの北極があることが判りましたが、事実はもっと複雑で地球の磁力線に捕らえられて発光して見られるオーロラ帯の中心は、この2つの北極の何れでもないのです。
 オーロラの観望の適地として知られるのは、アラスカやカナダの北部です。その理由として挙げられるのがリング状に分布するオーロラ帯と呼ばれる場所に近いからです。そして、このリング状のオーロラ帯の中心は地磁気極と呼ばれてグリーンランド北部にあるのです。地理学上の北極、さらに方位磁石が示す磁北極、そしてオーロラが示す地磁気極。地球物理学が示す成果の一つです。



2006年12月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2006年12月の星空です。

冬の星座が見られるようになってきました。
一年で最も夜が長い頃ですので、
温かい格好をしてたっぷりと星空を楽しみましょう。

天文カレンダー 惑星たち
5日: 満月○
7日 大雪(太陽黄経255°)
12日 下弦(半月)
14日: この頃ふたご座流星群が多く見られる
20日: 新月●
22日: 冬至(太陽黄経270°)
22日: )小雪(太陽黄経240°)
23日: 天皇誕生日
25日: クリスマス
27日: 上弦(半月)
水星: 夜明け前の東南東に見えるが日々低くなる。11日、火星と木星に近づく。
金星: 夕方の南西の低い空に見えるが低い。
火星: 夜明け前の東南東の空に見えるが低い。
木星: 夜明け前の東南東の空に見えるが低い。
土星: しし座のレグルスの近くで見える。22時過ぎに東空から昇ってくる。

次回も、お楽しみに

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