天文セミナー 第107回

『北斗とセブンスター』『球状星団』



北斗とセブンスター

 北斗七星が夕方の北東の空を駆け上がって来ました。春の星たちの本格的な登場です。この北斗七星は大熊座の一部、お腹から尻尾にかけての場所に相当します。したがって、大熊座はもっともっと大きな星座です。大きな星座の大熊座をよく見ると、どうやら足を天頂に向けて逆立ちしていることに気付きます。そうです。私たちのように地球上の中緯度に住む人にとっては天頂はおよそ赤緯35度の場所です。それより北にある大熊座は、足を天頂にして仰向けになった姿なのです。仰向けになって、北極星という天の杭に繋がれて1日に1回北極の周りを巡り続けているのです。逆立ちをした星座は他にもあって、どうしてだろう? と考えさせられることがあります。皆さんも考えてみてください。
 喫煙の習慣のない人にはなじみがないでしょうが、1969(昭和44)年2月発売の、国産初のチャコール・フイルター付きのタバコ「セブンスター」は包装が総て星(☆)で占められています。ほとんどの星(☆)は銀色ですが数字の7に相当する☆だけが金色で印刷してあります。これは、金色に輝く7つ星、つまり北斗七星が数字の7に似ていることからも、この北斗七星がイメージされたものです。発売当時としては、爆発的に売れたそうです。そして、このセブンスターの発売を記念して、星座シリーズとでも言える一群のタバコが同時に発売されたのでした。このデザインを決めるとき、当時の大蔵省専売局から東京天文台(現・国立天文台)に相談があり、私がその相談に乗るようにと当時の上司から命じられてデザインに参加したのでした。本命のセブンスターは勿論ですが、同時発売の星座シリーズのタバコの外装には黄道星座や七夕に関わる「琴座」、「わし座」などが使われ、その解説も私の仕事でした。星座シリーズのタバコは、短期間で終了しましたが本命の「セブンスター」は今でもタバコ屋さんの店頭に昔ながらの包装で並び、ヒット商品としての最長記録を更新中のようです。そして、このセブンスターの姉妹編として登場したのが「○○セブン」という名前のタバコです。この「○○セブン」という幾種類かのタバコが引き続いて発売され現在も店頭に並んでいます。このシリーズは、外国へも輸出され国外の空港の免税店の店頭にも並べられていて日本のタバコを代表する銘柄になったのでした。


球状星団

 夜空には多数の星たちが狭い範囲に集まって集団を形造っている場所があります。疎らに広がっているのは散開星団、一箇所に球状に集まって星たちがひしめきあっているところを球状星団と呼んでいます。散開星団は「すばる」などでおなじみで、主に青色で輝く若い星たちの集まりです。そして、散光星雲と呼ばれる雲のような輝くガスを伴っているか、またはガス星雲の近くにあることが多いのです。特に天の川のように星が密集しているところに見られます。
 一方、球状星団は、見られる場所に際立った特徴がありません。そして、この球状星団の星たちは太陽などよりももっともっと年老いた星であることがわかっています。現在では、銀河系の中で最も年老いた星の集団が、この球状星団だといわれています。
 北斗七星の柄になる4個の星が作る円弧。その円弧の中心点に近い場所に1個の星を見つけることができます。この星を含むのが”りょうけん座”。フラムスチードの星図では、牛飼い座の牛飼いが飼う2匹の猟犬として描かれています。この猟犬座を有名にしているのが”M3”の名前で呼ばれる球状星団の存在です。Mとは、18世紀に活躍したフランスの天文学者・メシエの頭文字を取り、彼が作ったカタログの3番目に記載されている天体がこの星団なのです。さて、このM3と呼ばれる球状星団の他にも多くの球状星団があり、それらには数十万個もの星がひしめき合っていて、それらが互いに引力で結び付けられているのです。そして、その星たちは銀河系が誕生した頃に生まれ、現在まで輝き続けていると考えられていて、いわば銀河系の”最長老”というべき星たちの集まりなのです。M3球状星団は暗い夜、目の鋭い人なら肉眼でもかすかに認めることができるかもしれませんが、大望遠鏡で見るM3には不思議な魅力を感じます。多数の星たちがひしめき合っていて、あたかも「おしくら饅頭」をしているかのように見えるのです。ぜひ、佐治天文台の大望遠鏡で見てみてください。



2006年5月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2006年5月の星空です。

春の星たちが見ごろです。
北斗七星を目印に、北極星や春の大三角を
探してみましょう。

天文カレンダー 惑星たち
2日: 八十八夜.月の近くに火星が見える
4日: 月の近くに土星が見える
5日: 上弦(半月)
6日: 立夏(太陽黄経45°)
早朝、みずがめ座流星群が多く見られる?
13日: 満月.月の近くに木星が見える
15日: 月の近くに木星が見える
20日: 下弦(半月)
21日: 小満(太陽黄経60°)
27日: 新月
水星: 19日が外合
(太陽の向こう側)のため見かけ上太陽に近い
金星: 夜明け前の東の空で
とても明るく、明けの明星として輝
火星: 地球から遠くなり、
望遠鏡での観望ではとても小さい。
22時ごろ沈む
木星: 今月4日が太陽の正反対の衝で
観望の絶好機
土星: 夕方から見えているが夜半には沈む。
観望はお早めに

次回も、お楽しみに

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