天文セミナー 第103回

『1秒長かった2006年1月1日』『原始星』



1秒長かった2006年1月1日

 今年、つまり2006年1月1日は、これまでの7年間に比べて1秒だけ長い1日でした。これは、日本時間の2006年1月1日午前8時59分59秒(世界時の2005年12月31日23時59分59秒)の後に1秒が加えられ、通常86400秒の1日が86401秒となったからなのです。この、加えられた1秒のことを閏秒と呼び、地球の自転に基づく世界時(日本標準時ー9時間)とセシューム133の原子によって規定される原子時(正確には力学時)の差を調整するためで、その差が1秒を越えないようにすることを目的として設けられました。1秒を最小の単位として必要に応じて日本時間の1月1日午前8時59分59秒の後、また7月1日午前8時59分59秒の後に、1秒を加えるか、または減ずるかして、調整します。このようにして日常生活に使われる時刻と原子時が保つ時間の一様性を同時に保持しているのです。
 1秒という時間は、日常生活には全くと言っても良いほど無関係かも知れませんが隠れたところではとても大切なことなのです。例えば、皆さんが日常的に使用している”携帯電話”や”カーナビ”のシステムはとても波長の短い電波が使用されます。この電波の振動数は、1秒間の振動数で表示され周波数○○メガヘルツなどと表示されていますね。もし、1秒間の長さが狂ってしまうと、大切な周波数が決められなくなってしまいます。時間の1様な流れを保持することはとても大切です、しかし日常生活に使われる時刻も大切です。この両者の間を調整する役目が”閏秒”なのです。この”閏秒”が加えられたため日本時刻の2006年1月1日は、それまでの7年間に比べて1秒だけ長くなったのでした。閏秒が加減される原因は、長い間一様だと思われていた地球の自転速度が一様でなかったことが発見されたからだったのです。


原始星

 生まれたばかりの星のことを原始星と呼びます。生まれたばかりの星は、まだ自分自身では十分に光を出すことができません。今まで多くの研究者が挑戦してきましたが、発見して観測し、詳しく調べることはなかなか困難でした。星の進化を研究する理論天文学者が幾つかの候補の星を発表していました。その結果、幾つかの候補の星が見つかり、特殊な観測装置で星の周囲を取り巻く降着円盤と呼ばれる塵の輪があることが判ってきました。
 実際の観測は、星の強い光をさえぎるような円盤を望遠鏡の焦点に置き、星の周囲の光だけで観測しようというものです。この方法は、日食の時以外にも太陽のコロナを観測しようと考えたフランスの天文学者が遥か昔に思いついたアイデアでした。この考えを星に応用して観測し、幾つかの候補星が見つかりました。これらの星は、いずれも星の周りを輪のように塵が取り巻いていました。このような状態の星、言い換えると星の赤ちゃんとも言えるような状態のことを原始星と呼んでいます。
 私たち太陽系の惑星にとって、太陽は親とも言える大事な星です。この親星が、生まれたときはどのような状態だったのか、そしてどのような過程で現在まで進化して来たのか?は、とても大切な情報です。この情報を得ようとして多くの天文学者たちが知恵を出し合って研究に励んできました。そうして、生まれたばかりの星であることの証拠が捉えられたのです。それは、国立天文台ハワイ観測所の「すばる」望遠鏡による観測と解析の結果でした。原始星の赤道方向には、星の自転による影響で両極方向から円盤状に集まってきたガスと塵が円盤状に、また南北の両極方向には星自体から噴出すようにガスと塵がジェット状に観測されたのです。もっとも、この現象が直接観測された訳ではなくて、この星の背後にある明るいガス星雲にシルエットとして観測されたのです。今まで、観測されていた原始星では、赤道方向に円盤状に集まってできるもの(難しい言葉では”降着円盤”と呼んでいます)が、特殊な観測手段でのみ観測されていました。この、降着円盤こそが惑星系を作る元であることが知られていて、我々の太陽系も同じ過程を経て現在のような姿になったのです。今後の研究が楽しみですね。



2006年1月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2006年1月の星空です。

宵の明星として長らく楽しませてくれた金星が、
13日の内合以降、明け方見られるようになります。
星空のほうは、冬の星たちが一番の見ごろです。

天文カレンダー 惑星たち
1日: 元旦
4日: りゅう座イオタ(しぶんぎ座)流星群が多く見られる?
(明け方、北東)
5日: 小寒(太陽黄経285°)
7日: 上弦
9日: 成人の日
月の近くに火星が見える
13日: 金星が内合(観察不適)
14日: 満月
15日: 月の近くに土星が見える
20日: 大寒(太陽黄経300°)
23日: 下弦
24日: 月の近くに木星が見える
26日: 水星が外合(観察不適)
28日: 土星が衝(観察好期)
29日: 新月
水星: 26日に外合
(地球から見て太陽の向こう側)で観察不適
金星: 13日に内合
(太陽と地球の間)で観察不適
火星: 観測好期
木星: 明け方東の空
土星: 観察好期

次回も、お楽しみに

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