天文セミナー 第97回

『閏秒』『惑星の衛星とシェイクスピア』



閏秒

 最近、電波時計という優れた時計が発売され話題になっています。10万年に1秒の誤差とか言われ、愛用者も増加しているとか。私も、早速購入して愛用していますが、さすがに誤差が少ないばかりか、月初めになるときっちりと1日が表示され、日付を訂正する手間も省け誠に重宝しています。この時計は、日本を東西に分割して発信されている波長の長い電波で規制されていて、この電波は大気による減衰が少ないのが特徴です。つまり、朝日や夕日が赤く見えるのと同じ原理なのです。西日本は、佐賀県にある羽金山の発信所から60.0キロヘルツで、東日本は福島県大鷹鳥谷山から40.0キロヘルツでそれぞれ発信されています。この電波を、時計の内部に組み込まれたアンテナと受信機で受信し、内部に持ってる水晶発振器を規制しているのです。発信されている電波の呼出符号はいずれもJJY。24時間発信されていて、その信号には1秒ごとの時刻の信号と共に年月日の信号やその他の情報も含まれていて、国土交通省通信総合研究所が運用し、広く通信や報道の関係者によって、電話やテレビなどの周波数の規制などに使われています。
 もう、かなり昔になりますが標準時刻を供給する施設で閏秒を入れることを忘れ、大きな問題となったことがありました。この閏秒は、地球の自転速度が精密に観測・測定できるようになり、自転速度も不変ではないことが判明したため、季節の移り変わりに時刻を合わせる必要ができたためです。以前は、地球の自転速度は不変と考えられていましたが、地球を取り巻く海の水と地表との間で起きる摩擦が原因で変化することが知られたのでした。時刻と季節のの移り変わりを調節するために閏秒が、毎年日本時刻で1月1日と7月1日の午前9時の直前、つまり59分59秒の後に60秒を挿入し、その次を9時0分0秒とするように国際的に決められました。さて、電波時計は?。と言うと、この閏秒もJJYの信号電波で送られますので、全く心配がなくなったのでした。時刻と時間。いずれも非常に重要な物理量ですね。光陰矢のごとし、です


惑星の衛星とシェイクスピア

 1986年のことです。惑星探査機ボエジャーII号が天王星に接近し、10箇の微少な衛星を発見しました。それまで、天王星には5箇の衛星が地上の望遠鏡によって発見されていて、合計15箇となりました。衛星が発見されると当然のことながら、名前が付けられるのが習わしです。ウイリアム・ハーシェルによって1787年にタイタニアとオベロンが発見され、その後アリエル、ウンブリエルがラッセルによって1851年に、ミランダがカイパーによって1948年に発見されていました。1948年のカイパーに依る発見以来40年が過ぎ、人工の探査機が惑星観測を行うようになって、衛星の発見数が急増することになりました。
 ところで、ハーシェルによって発見された2箇の衛星はいずれも1600年代初頭のイギリスの偉大な劇作家・ウイリアム・シェークスピアの書き残した戯曲に登場する人物の名前が付けられていました。タイタニアとオベロンはいずれも「真夏の夜の夢」からの命名です。そして、ボエジャーII号が発見した衛星には、コーデリア、オフェリア、ビアンカ、クレシーダ、デスデモナ、ジュリエット、ポーシャ、ロザリンダ、ベリンダ、パックと名付けられました。この内のベリンダ以外は、いずれもやはりシェイクスピアの戯曲に登場する人物の名前。コーデリアは「リア王」、オフェリアは「ハムレット」、ビアンカは「オセロー」、クレシーダは「トロイラスとクレシーダ」、デスデモナは「オセロー」、ジュリエットは「ロミオとジュリエット」、ポーシャは「ジュリアス・シーザー」、ロザリンダは「お気に召すまま」、パックは「真夏の夜の夢」に登場します。そして、番外として小惑星(2985)番はシェイクスピア。名前を知って来歴を尋ねるのも楽しいものです。



2005年7月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2005年7月の星空です。
西の空には春の星たち、東の空には夏の星たちが見えています。
夏の大三角から天の川を見つけてみましょう。

天文カレンダー 惑星たち
2日: 半夏生(太陽黄経100°)
5日: 地球が遠日点
6日: 新月
7日: 小暑(太陽黄経105°)
9日: 水星が東方最大離角(夕方西空)
15日: 上弦
19日: 夏の土用の入り(太陽黄経117°)
21日: 満月
28日: 大暑(太陽黄経120°)
29日: 下弦
水星: 上旬は観察好期
金星: 観察可能(夕方、西)
火星: 真夜中過ぎに東空
木星: 夕方西空
土星: 観察不適

次回も、お楽しみに

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