天文セミナー 第83回
『太陽に塵の環』『2個の彗星』
太陽系の9個の惑星の中で最も人気があるのは土星のようです。佐治天文台へ来られる多くの参観者の方々に見てもらう天体で、例外なく「ワー」と言って歓声を上げられるのが「環」を持つ土星だからです。ところで、土星以外にも輪があることが知られたのは、天王星が恒星を隠す食、掩蔽の観測からでした。それ以来、海王星と木星にも環があることが知られました。
さて、このときの観測計画は大きな気球を成層圏にまで昇らせ、皆既食の間に太陽の周辺を東西方向に赤外線で観測しようと言う計画でした。観測は成功し、得られたデータからは意外な結果が求まったのです。それは、太陽の半径の4倍ほどのところにダスト、つまり固体の塵が集積していることを示唆していました。太陽にも「環」が発見されたのでした。ところで、先月に書きました「黄道光」の正体は、どのような生涯をすごすのでしょうか。実はこの黄道光の正体である固体の塵が、太陽に引き寄せられて太陽の半径の4倍ほどのところに一時的に集積していたのです。その塵の一部が、偽コロナとなって皆既日食のときの見えているのです。1991年の、メキシコの日食の時にも観測が試みられましたが、悪天候に妨げられて不成功に終わったのでしたが。 |
最近、太陽系の話題が豊富で、特に地球近傍や太陽系の最も外側に多くの天体が発見されています。その中に、とても小さく暗いので今までの捜索方法ではとても見つからなかっただろうと思われるような彗星や、また太陽に非常に接近するような彗星、クロイツ群と名付けられている彗星のメンバーのものも多数あります。新しい観測機材が開発された結果と言えるでしょう。
今月、夕方の西空に見られるのは、ニート彗星とリニアー彗星。ニート彗星は2001年8月24日に、リニアー彗星は2002年10月14日に、いずれも最新の観測機材を用いた観測チームによって発見されたのです。さて、この2個の彗星が、夕方の西空で肉眼で観望できるとなると、気になるのが地上の人工灯火です。誰でも、できるだけ暗い夜空で、幻想的な彗星の姿を見たいと思うでしょう。そこで、思い出すのが全国ライトダウンのキャンペーン。ぜひ、試みたいものですね。彗星の尾の正体は固体の塵を含みます。そして、その尾は黄道光との正体となり、やがて太陽の環。面白い循環ですね。 |
次回も、お楽しみに |