天文セミナー 第74回
『掩蔽(えんぺい)観測と小惑星の大きさ』『火星の大接近』
星の大きさはどのようにして測られるのでしょうか。私たちが、遠くの物の大きさを考える時、距離と見かけの大きさで判断しますね。星の場合はどうでしょう。惑星のように、見かけの大きさが分かるものに対しては、天体力学という学問が教えてくれる距離、ここでは地球から目的の天体までの距離と、見かけの大きさから求めますが、見かけの大きさが測れないほど小さい天体では、この方法は役に立ちません。ところが、理科年表などには小惑星の大きさとして表に掲げられていますね。例えば、セレスは直径910kmの球形、エロスは38kmx15kmx14kmの3軸不等の歪な形だというわけです。小惑星の中で最も大きセレスでも、実際の大きさはこの程度。したがってそのほかの小惑星はもっと小さく、数10kmから数kmほどしかありません。
小惑星の直径は大変小さく、恒星を本当に隠すかどうかとても不安です。その為に多くの観測者によって多数の望遠鏡が動員され、一斉にその恒星を監視します。ある場所では、恒星が隠され、他の場所では隠されないという結果であれば、その観測点の間の距離より大きくはない、という結論が得られますね。こうした地道な観測の結果、多くの小惑星は球よりかなり歪な、メイクイーンと呼ばれるジャガイモに似た形だろうと考えられ、これは小惑星同士が衝突を繰り返した結果だろうと考えられるようになったのでした。小惑星の大きさと形を星食(掩蔽)の観測から求め、さらに小惑星の成り立ちまで知る手がかりが得られたことになります。 |
火星といえば生物が住む星?、と長く思われてきましたね。これは、19世紀から20世紀にかけて活躍した天文学者たちが、当時の大望遠鏡で観測し、縞模様があると言い始めたことがきっかけでした。この模様に初めて呼び名をつけたのがスキヤパレリというイタリアの天文学者でした。彼は、模様のことをカナルと呼びました。ところが、カナルとは英語で運河のことでした。そこで、多くの人たちに、火星には運河がある、と思い込ませてしまったのでした。日本でも、昭和の始め頃には、この運河が信じられていて、巨大な運河を作るような文明を持っている生物が住んでいるとすればきっとこのような姿だろうと、大きな頭に細い足の火星人が考えられました。また、明治の初め、この火星が異様に明るく輝いていました。ちょうど西郷隆盛が明治政府と戦って戦死した西南戦争の終わって間もない頃だったので、巷ではこの火星を西郷星と呼んだそうです。
さて、今月はこの火星が地球に大接近します。最も近くなるのは8月27日で、そのときの距離は0.3727天文単位、およそ5576万km。見かけの直径は25.1秒角にもなりますので、中小口径の望遠鏡でも模様が見えることでしょう。そして火星接近頃は、「マーズウィーク」キャンペーンが繰り広げられます。各地で火星観望が行われ、どのような火星が見えるでしょう。
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次回も、お楽しみに |