天文セミナー 第63回

『池谷−関彗星』『今年の中秋の名月』



池谷−関彗星

  日本人の天文愛好者にとって、いくつかの忘れられない彗星があります。1965年9月18日の早朝、静岡県浜松市の池谷薫氏と高知市の関勉氏によって発見された池谷-関彗星もその1つではないでしょうか。この彗星は、発見され観測が集まると太陽に非常に近づくことが判りました。最も近づいたときには太陽の表面を掠めるように移動するのではないかと、予報されたのです。これまで、太陽に非常に近づく彗星がいくつか発見されていて、このような彗星を研究した研究者の名前を被せてクロイツ群の彗星と呼ばれてきました。そして、これらのクロイツ群の彗星は元々1つの彗星だったのが、何かの原因で分裂してそれぞれが運動しているのではないか、と考えられるようになりました。
 池谷-関彗星の観測が続けられ、1965年10月21日には太陽の中心から僅か117万kmのところを通過することが判りました。そして、その時刻は日本での昼間。当時の東京大学東京天文台乗鞍コロナ観測所では、その姿の写真撮影を試み、見事に成功したのです。

池谷−関彗星(1965.11.01 香西台長撮影)

 池谷・関すい星は、1965年9月18日(UT)池谷薫、関勉の両氏が8等級で発見しました。近日点通過後に長大な尾を見せて東天に現れ、また核が分裂した様子が観測されました。太陽をかすめる「クロイツ群」のメンバーです。
 11月2日頃の中央集光の光度はおよそ4等級、尾を含む光度は3等級、尾の長さは20度ほどと観測されています。

   池谷-関彗星のように太陽に非常に接近する彗星は、太陽の強い光に妨げられて発見の機会が少ないのです。その後、太陽を観測する人工衛星が次々に打ち上げられました。これらの人工衛星に搭載されていたコロナグラフで撮影された写真から、続々と太陽近辺で彗星が発見されたのです。これらの彗星は、太陽を掠めて通りすぎるもの、太陽に突っ込んで消滅するものなど様々でした。このように、太陽に非常に接近する彗星も数多くあることを教えてくれているのです。


今年の中秋の名月

  毎年繰り返される質問が、中秋の名月の日付でしょう。今年のその日は9月21日。そして、秋分は9月23日。秋分の日の2日前です。ところで、仲秋は旧暦で秋分を含む月と決められています。そして、この月が8月。ちなみに、7月は孟秋、9月は季秋と呼ばれます。したがって、中秋の名月は旧暦の8月の月のこと。ここで、間違えてはいけないことは、この名月は満月の日とは限らないことです。なぜでしょう。それは、中秋の名月は8月の15夜と決められているからです。15夜、いうまでもなく満月とお思いかもしれませんが、15夜とはその月の15番目の月のこと。15夜が満月の前後になってしまうこともしばしばです。
 今年の中秋の名月は9月21日。国立天文台発行の暦象年表によると、この日はちょうど満月。しかも、22時59分が望(満月)の時刻。東京の月の出は17時53分。月の出から5時間経過し中空に輝く文字通りの満月が見られると言うわけです。

満月

うさぎのもちつき、かに、ライオン・・・

世界中でいろんな見方があります。
あなたにはどう見えるでしょう?

  ところで、旧暦は太陰太陽暦と言われ、月の満ち欠けと季節を組み合わせてあります。月の満ち欠けを基準に数えると太陽暦の1年より短くなります。そこで考えられたのが閏月。8月に閏月が加えられると閏8月。この年には、仲秋が2度あり、したがって中秋の名月も2回愛でられることになりますね。



2002年9月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2002年9月の星空です。

夏から秋へと、星空も移り変わってきました。

天文カレンダー 惑星たち
1日: 水星が太陽の東で最大離角
7日: 新月
9日: 白露
14日: 上弦、水星が留
21日: 満月
23日 秋分
26日: 金星が最大光度
28日 水星が太陽のこちら側
30日: 下弦
水星: 夕方の西空、1日最大離角
金星: 夕方の西空、26日に最大光度(4.6等)
火星: 明け方の東空、低い
木星: 明け方の東空
土星: 夜半前に上る

次回も、お楽しみに

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