天文セミナー 第61回
『電波星さそりX-1』『大陸移動』
昨年から、このセミナーも佐治天文台のホームページに移動しましたが、相変わらずの私のおしゃべり。ついに6年目になりました。今後も、宜しくお願いします。
この天体は、短い周期で明るさが変わるのではないかと想像され、私もこの星の明るさの変化を写真で追跡したことがありました。最新の理科年表によりますと、この天体の位置は赤経:16時19.9分、赤緯:南15度38.4分にあって、低質量の中性子星が連星系を作り0.79日の周期で回転するために明るさが変わる、とされています。さそり座を見るたびに思い出す記憶でした。 |
世界地図を見ると、南アメリカの東海岸とアフリカの西海岸の海岸線の形がとてもよく似ていることに気づくでしょう。この形がよく似ていることから、ドイツの気象学者・ウェゲナーは20世紀の始めに大陸は昔から同じ場所にあったのではなく、お互いに移動していると言い出しました。現在、大陸移動説と呼ばれている考えの始まりでした。ところが、この説を支持するような証拠が見つからず、1950年代になってしまいました。当時は、まだ月の運動に関する詳しい理論が未完成で、観測地の位置も高い精度では決まっていませんでした。そこで、この研究を完成させようと恒星が月に隠される現象、星食の観測が世界中で広く行われていました。
1957年10月4日、突然当時のソ連は人工衛星スプートニクの打ち上げに成功し、アメリカは翌年エキスプローラーを打ち上げました。こうして、人工衛星による宇宙時代が開幕しました。1960年代になると、大きな風船型の人工衛星が打ち上げられ、小型の望遠鏡でも写真観測が可能になりました。この衛星に注目したのが、当時の東京天文台。アメリカから贈られたベーカー・ナン式のシュミット望遠鏡を使って人工衛星を観測していたのですが、この衛星を観測して大陸移動を確認しようとソ連に協同観測を申し入れました。こうして、日ソ協同観測が始まったのです。やがて、現在カーナビなどでお馴染みのGPS、全地球測位システムをアメリカが開発し試験運用がはじまりました。このGPSによると、今まで考えられていた精度より数段高い精度で位置が求まることが分かり、ついに人工衛星の位置観測から大陸移動説を検証する研究のプログラムは終了しました。 |
次回も、お楽しみに |