天文セミナー 第55回

『しぶんぎ座流星群』『1948l彗星(日食彗星)』



しぶんぎ座流星群

  昨年の11月19日の夜明け前、日本人の何%の人が夜空を見上げたことでしょう。見た人も、見なかった人もため息交じりの感慨に耽ったことでした。そうです、しし座の流星群が期待通りに、流星の雨を降らせたのでした。このしし座の流星群の活動によって、天文の現象に深く関心を持った人も多かったにちがいありませんね。
 このしし座流星群ほどではないでしょうが、毎年出現を期待できるのが、年初、まだお屠蘇気分に浸っている1月3日から4日にかけて出現する「しぶんぎ座」の流星群の活動です。この「しぶんぎ座」は、現在では使われなくなった星座で、りゅう座のι(イオタ)星を中心にしたあたりに、フランスのラランデが1795年に設定した星座です。1795年当時、ラランデ自身が天体観測に使用した壁掛け型の四分儀を記念に残そうと考えたものでした。四分儀とは、円周を90度づつに4分割したもので天体の高度を測る道具として広く使われていました。同じ目的で作られ、使われてきたものに六分儀や八分儀がありますが、なぜだか四分儀座だけが消えてしまい、流星群の名前としてだけ残されています。しかし、いまでは「りゅう座流星群」と呼ばれることも多くなってきました。


りゅう座としぶんぎ座

今は無き「しぶんぎ座(壁面しぶんぎ座)」。
流星群の名前としてだけ残っています。

 1963年の正月。私は当時勤務していた東京大学東京天文台で、このりゅう座の流星を観測していた時のことです。宿直の同僚が観測室に息を弾ませてやってきました。天文電報が届き、静岡県浜松市の池谷薫さんから新彗星の発見と確認の依頼だとのことでした。当時、私は国内外からの天文情報の授受の役目を務めていました。電文を読むと、光度12等級の彗星を眼視で発見したと言うものでした。「アマチュアが12等の彗星を眼視で見つけるなんて!、見えるわけがない!」とつぶやきながら確認の写真を撮影し、早速現像したのでした。彗星像が確認されたときの驚きは今でも忘れられません。Ikeya彗星(1963a)の誕生でした。正月と盆。日本中で民族の大移動が行われ、夜空は本来の暗さを取り戻します。その暗い夜空に、潜むのが新天体。監視が重要なことを思い知らされたのでした。


1948l彗星(日食彗星)

 1948年の冬。明け方の南空に1個の大きな彗星が現れました。南アフリカで見られた皆既日食の際に発見され日食彗星と名づけられた彗星1948l(エル)でした。当時は、まだ終戦の名残が強く残り、夜空も大変暗く、この彗星はその暗い夜空を長い尾を引きながら悠々と移動していたのです。私は、無謀にもこの彗星を写真に収めたいと思いました。幸い、父が写真に強い関心を持っていたので自宅にはカメラや現像薬品のストックが有り、これを使用し自作の望遠鏡に同架してトライしたのです。当時の感光材料はISO10程度のさくらパンF。わくわくしながらの手動追尾撮影と現像でした。幸い、かすかながらも彗星の姿を見出した時の感動は今でも忘れられません。それ以来、東京天文台に職を得ても天体写真との付き合いが続くのでした。

いろいろな現像用品

天文愛好家の中では、今でも自分で現像する人が少なくありません。

 天体写真。今でこそ多くの愛好家を得て、写真界でも市民権を得ているように感じますが、カラーになったのはごく最近のこと。情報量が飛躍的に向上し目の前のヴェールが取り去られた感じがしたものでした。天文と写真。長い付き合いが続いています。



2002年1月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2002年1月の星空です。

冬の星たちが絶好の見ごろです。

木星・土星もお忘れなく。

天文カレンダー 惑星たち
1日: 木星が衝
2日: 地球が近日点通過
5日: 小寒
6日: 下弦
10日 大寒
12日: 水星が東方最大離角
13日: 新月
14日: 金星が太陽の向こう側
18日: 水星が留
22日: 上弦
28日: 水星が太陽のこちら側
29日: 満月
水星: 夕方の西空、12日東方最大離角
金星: 明け方の東天低い
火星: 22時ころに沈む
木星: 夜半に南中、観望の好期
土星: 一晩中観望できる、観望の好期

次回も、お楽しみに

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