天平宝字 3(759)年元旦(旧正月の2月5日ごろ)、因幡国庁では、豊年の兆候である雪が降っており、また、19年に一度の立春が重なった、大変おめでたい日でもありました。
そのめでたい日に万葉歌人・大伴家持は、新任の因幡国守として、国や郡の役人を前に臨み、「新しき年の始めの初春の今日降る雪のいや重け寿詞(新年の始めの今日、降る雪のように一層重なれ良い事よ)」と『万葉集』最後を飾る「祝い歌」を詠みました。
家持は、疾病や内乱、政変が相次ぐ天平時代に愛と平和に満ちた未来の実現を祈ったのです。
この万葉集終焉の歌は、大正5年に、県知事らにより万葉歌碑として建立され、また、昭和34(1959)年の家持1200年祭(祝い歌誕生)には、万葉研究者の佐佐木信綱さんの歌碑が建立されたことで、「万葉のふるさと」が定着しました。
地域では、実行委員会を結成し、大伴家持生誕1300年という節目の年に、「万葉のふるさと鳥取市」をアピールし、若い世代に豊かな鳥取の文化風土を伝えていく機会として、大伴家持の魅力や功績を伝える記念事業を展開しています。
漫画家の里中満智子さんの作品展や講演会、また、佐佐木幸綱さん(歌人)や坂本信幸さん(高岡市万葉歴史館長)らが、大伴家持の魅力を語る記念フォーラム、わが愛する「愛のもののふ大伴家持」と題した、和泉元彌さん(狂言師)や、小島ゆかりさん(歌人)らのトークショーなどが開催され、盛り上がっています。
いよいよ3月9日(土)には、和泉元彌さんや紺野美沙子さん、下田麻美さん(鳥取市出身)らが出演し、万葉集編纂の経緯などを朗読や芝居、音楽でつづる音楽朗読劇で、事業を締めくくります。