我が国では、度重なる大規模災害により、その都度多くの尊い人命を失い莫大な損失を受けてきました。本市においても、昭和18年鳥取地震、平成16年台風21号、平成29年豪雪など、自然災害によって甚大な被害を受け、長期にわたる復旧・復興を繰り返してきました。そうした中で、災害による被害の最小化や社会システムの維持、迅速な復旧復興を図るための事前防災の重要性が教訓となりました。
「国土強靱化」とは、いかなる自然災害が起こっても、機能不全に陥ることが避けられるような「強さ」と「しなやかさ」を持った安全・安心な社会経済システムを構築していくことを言います。大地震などの発生の度に甚大な被害を受け、その都度、長時間をかけて復旧・復興を図るといった「事後対策」の繰り返しを避け、今一度、大規模自然災害などのさまざまな危機を直視して、平時から大規模自然災害などに対する備えを行うことが重要です。
その上で、住民に最も身近な行政機関である鳥取市では、「鳥取県国土強靱化地域計画」に準じつつも本市独自の住民目線に添う方向性を持った、「鳥取市国土強靱化地域計画」をとりまとめました。
「国土強靱化」と「防災」は、災害への対策という点で共通しますが、その本質はそれぞれ異なるものです。
「防災」は、基本的には地震や洪水など災害ごとのリスクを特定し、そのリスクに対して対応するものです。一方「国土強靱化」は、リスクごとの対処対応をまとめているものではありません。あらゆるリスクを見据えつつ、どんなことが起ころうとも最悪な事態に陥ることが避けられるような強靱な行政機能や地域社会、地域経済を事前につくりあげていこうとするものです。つまり、基本目標に掲げた人命の保護や維持すべき重要な機能に着目し、あらゆる自然災害を想定しながら「リスクシナリオ(起きてはならない最悪の事態)」を明らかにし、最悪の事態に至らないための事前に取り組むべき施策を考えることです。
※現況値(平成30年度)➡目標値(令和5年度)
基本目標である人命の保護などのためには、施設の整備・耐震化、代替施設の確保などの「ハード対策」だけではなく、訓練・防災教育などの「ソフト対策」を、災害リスクや地域の状況に応じて適切に組み合わせて効果的に施策を推進していくことが求められます。
ハザードマップの作成や避難訓練といった「ソフト対策」は、限られた財源の中で、短期間に一定の効果を得るための有効な対策となり得るものです。一方「ハード対策」は、堤防の整備や施設の耐震化のように、時期を逸することなく着実に対応することが求められるものがあります。従って、長期的な視野の下で、全体的な工程を念頭に置きつつ、ソフトとハードを適切に組み合わせた多重防衛の考え方により、計画的に施策を推進していくことが重要となります。
市民一人一人が災害時に自分や家族の安全を確保するための取り組みを行います。
町内会などの地域団体では、災害時の地域の安全確保のための取り組みを行います。
行政は、ハード面の整備や、「自助」「共助」と協働でソフト面の取り組を行います。
大規模自然災害などに備えた強靱なまちづくりを実現するためには、行政のみならず、民間事業者・市民を含め全ての関係者の英知を集結し、総力をあげて取り組むことが不可欠です。そして連携と同時に、市民一人一人が自らの身を自らで守り、お互いが助け合いながら地域でできることを考え、さまざまなかたちで周りと連携・協力しながら強靱化の輪を広げ、重ねていくことが重要です。
国土強靱化は計画を策定するだけでなく、今後は市全体の強靱化の取り組みを進捗管理しながら推進することとしています。
災害に強く、安心して暮らせるまちづくりのためにみなさまのご理解とご協力をよろしくお願いします。